Jazz and Far Beyond
カセットテープ特有のヒスノイズが、時代の証人として「便利」一辺倒のリスニングを拒否する。
遠く離れているので国内版にはなかなか触れることがないが、やはりこの1枚は選んでおきたい。沢田さんの音楽は妙に心に残る。城戸夕果のフルートも素晴らしい。
ピアノとベースのデュオで奏でるコルトレーン…極限まで研ぎ澄まされ、静謐で息を呑む玲瓏な調べとなってこの身に響き渡った。
過酷な人生を濾過した果ての無垢な有り様。あるいは愛する女性(ひと)との至上のひととき。
20歳を迎え、すでにハワイでも認められ世界で活躍するウクレレ奏者、作曲家のRIOが自ら”デビューアルバム”と呼ぶ『RIO』を井上銘のプロデュースでリリース。これからRIOの音楽を探す旅に連れて行ってもらうことにわくわくが止まらない。
岩崎良子のパイプ・オルガンの凄まじい音圧と時に対峙し時に寄り添い、至高の瞬間を現出させる竹内直。
謎の音響空間に浸り、さらに音響的感動に移る。
ノルウェーを拠点に活動し、最小限の音を選び抜くことにこだわるピアニスト、田中鮎美のトリオ、セカンドアルバム。
2019年に鬼籍に入った齋藤徹に捧げられた、大いなる響きの音楽。
その晩年の帰結は、曲=メロディーへのこよなき愛。 涙、合掌。
異端音楽家の魂が「盤」という形で未来永劫に生き続ける証である。
2021年の新譜と言えば、やはりTheo Croker(シオ・クローカー)の『BLK2LIFE || A FUTURE PAST』が強烈な印象を残した。広大なストーリー性に加え、今まで聞いたこともないような斬新なアイデアが満載だった。
何れもがリューダスと丁々発止の対応を見せ、日本のインプロヴァイザーのレヴェルの高さを刻み込んだ。
ライル・メイズの遺作<Eberhard>は、「水の循環」を想起させるような、そしてライルが永遠の中に生き続けていると感じさせる音楽だった。ライル・ファンには最高の贈り物となった。ありがとう、ライル!
『ロスト&ファウンド』を耳にし大きな衝撃を受けて以降、その動向に注目し続けていたグレッチェン・パーラトの8年振りになる新作。
オンマイクながら綺麗なサウンドを引き出している。
ポーランドのピアノトリオRGGが、母国のSF作家スタニスワフ・レムに敬意を込めて、宇宙や月をテーマにミステリアスな世界を描く意欲作。
緻密さとダイナミクスにひたすらに圧倒されるヘンリー・スレッギルのズォイド新作。ややサウンドの音繊維がほぐれ、スレッギルのアルトの魅力を堪能できるものとなっている。
リトアニアの俊英と日本の目眩くアーティスト群像とのフリー=インプロバイズドの「いま」。
ニューヨークのピアニスト・ヴォーカリストの実力派、チャンピアン・フルトンがスカンジナビアン・リズム・セクションをバックに歌う、ロマンチックなアルバム。
sara=.esドットエスの行くべき道が荊の道や蛇の道ではなく、創造の神の祝福を受けた愛の道であることを予感させるコンサートであった。
弾いているのではない。キースに語りかけ、いや訴えかけている。”もう一度ステージに立ってピアノを弾いて!”
コロナ禍の中ならではの五時間にわたるアルバート・アイラーをめぐる貴重なネット・ライヴ体験。
6月ブルーノート東京公演を見事に成功させ、ショパン国際ピアノコンクールに向かい、予選ごとに大きな進化を遂げ、セミファイナリストに。シティソウルバンド Penthouseでビルボードライブ東京に。大晦日には上白石萌音と紅白歌合戦に出演。と、このわずか1年で角野にあちこち連れて行ってもらった。2022年も新たな音楽の旅に連れて行ってくれることを楽しみにしている。
今宵は、新たなる同志を得て、「生きた音」が横溢する場を共有出来た稀有な夜だった。
音楽魔人・三上寛、即興の巫・神田綾子、邂逅
ピアノと華麗に舞踏するセシル・テイラーの正系としてさらなる旅立ちへ。
本田のエネルギッシュなドラミングも音色がクリアで、箏とのサウンドの絡みが絶妙だ。道場というユニット名で活動を継続させているだけある。フリージャズでも、ここまでパワフルに、そしてハイレベルの交歓を体験することは滅多にない。
大好きなロバート・グラスパーが10月に行った2つの配信ライブ、相変わらず強く印象に残る演奏だった。アメリカの配信ライブはお値段もお手頃でアーカイブの期限制限もないので気安く参加できるが、このようなライブに当たるとえらく得した気分になる。
旅するパリのアルトと、マリ仕込みの気鋭ジャンベによる未踏の時空への越境。
シャイ・マエストロが2021年1月にリリースしたECM2作目『Human』のカルテットのライヴ。レギュラートリオに同世代のアメリカ人トランぺッター、フィリップ・ディザックが加わり美しく、ときにダイナミックな演奏を展開する。
リアルでは丸の内Cotton Clubでの nagaluフェスと白楽Bitches Brewでの仲野麻紀の2回公演が白眉。
第50回を迎えたメールス・フェスティヴァルだが、直前に4つの野外コンサートの許可は下りたものの大半はオンラインでの開催となった。とはいえ、ありきたりのインターネット・コンテンツにしないための様々な創意工夫がなされていた。