#08 喜多直毅クアルテット 大阪公演
Naoki Kita Quartette Live In Osaka 岡崎 凛
喜多直毅は途方もなく激しい動きでヴァイオリンを操っていた。そのヴィジュアルの迫力が、クアルテットの推進力の一つとなっていた。
続きを読むJazz and Far Beyond
喜多直毅は途方もなく激しい動きでヴァイオリンを操っていた。そのヴィジュアルの迫力が、クアルテットの推進力の一つとなっていた。
続きを読む時に刃(やいば)のような協奏を各々のソロが受け止める刹那に覗く、流れ落ちるパッション、それを単音に収斂させるタフネス―目の当たりにする度に、クァルテットを構成する個人と総体、その互角の強度を再認識する。
続きを読むヴァイオリニスト、喜多直毅のオリジナル曲で聴く個性的なタンゴ・クアルテットのサードアルバム。毅然とした姿勢、漂う重厚感、一気呵成に駆け上がる激しさに魅了される。
続きを読む全編オリジナル楽曲による喜多直毅クァルテット(喜多直毅/vn, 北村聡/bn, 田辺和弘/cb, 三枝伸太郎/pf)が、クァルテットとしては8年ぶりとなる新作アルバムを引っ提げ、名古屋・大阪・神戸・広島・福山の5都市にわたる西日本ツアーをおこなう(名古屋と大阪は初公演)
続きを読むふだん押さえつけているエモーションが、際から際まで刺激される。曲が進むにつれて床へ落とされるスコア同様、様々な澱(おり)が剥がれおち、気がつけば鎧なき寄る辺なさ。容赦ないひりつき具合が、現実を串刺しにする。
続きを読む表現者が表現手段を超えるーあらゆる”Beyond”の境地を体現していた。
続きを読むこぼれでる多様な音の変遷に動揺しつつ、次第に音の遠近が攪拌されてくる。それらの音がスコアへと収斂されていくさまが幻視され、逆方向のベクトルに絡めとられてゆくのだ。磁場としてのコンポジション。制御不能なものが還りゆく場所。その見果てぬうねり。
続きを読む各々の実験的な経験値は、遠くから忍び寄るメロディにそこはかとなく宿る。「聴かせる」のではなく「聞こえてくる」のだ。
続きを読む音楽はしばしば特定の記憶を結びついて懐かしさを増すが、生きえなかった過去を想像力し喚起することによってもまた、今を揺さぶり未来を幻視する力をもつ。
続きを読む深層から絞り出されるメロディの儚(はかな)さはリアリティへの絶望を映す鏡だ。なぜ沈黙や郷愁の残滓に心震えるのか。それを意識して改めて気づく薄ら寒い現況がある。
続きを読む肯定の音楽、そこへ至るまでの危機感 (クライシス=境界)の数々が回想され、収斂されてゆく整合性。喜多クァルテットのステージは毎回、まさにドラマである。
続きを読むこの4人でなければ成立しない物語世界だ。表現とは代替の効かぬものなのだ、という峻厳だが疎かにされがちな事実—それが刃のように突きささってくる。
続きを読む表現の可能性に果敢に挑みつづけながらも、単なるインパクトに終始せず、必ずやその先にある薫り高い音楽性にまで到達する二人の音楽の気概—その実像を堪能できる一枚
続きを読む垣根のない音楽。「聴く」という構えをほどく音楽—そのような音を前に、音楽のカテゴリーは不問だろう。
続きを読む多層をなす奇抜な構造に度肝を抜かれると同時に、流れ落ちるピュアなパッションに心洗われる—こうした相克的体験はそのまま生の矛盾そのものだ。
続きを読む宗教的な特性と安易に結びつけるべきではないが、その厳しさや直線的で刃のような立ち昇り、切り返しの激しさに、仏教的なループの緩やかさはない。
続きを読む国内屈指といえる4人のアーティストのもつ高度かつ個性的な技倆(ぎりょう)が見事に開花。
続きを読む自然発生的ながら、張り詰めたテンションはいかなる時も健在。自らを知り抜いていることが他者への自然な配慮となって現れる。/Their interplay is spontaneous, but never loose intensity of tension at any time. The fact that they thoroughly know their own music is emerged as tolerance to others.
続きを読む清濁併せ呑む風格、血の通った威厳。昨今失われた、或いは生き様の根源に関わりながらも捉えられないものだからこそ追わずにはおれない。音によって畳みかけられた60分の余韻には、若干痛みも伴う。痕跡を超えた、音楽の爪痕である。
続きを読む境界音楽の騎手として、このクァルテットはどこまで疾走し続けるのだろうか。今後も目が離せない/As cutting-edge of transborder music, just how far will this quartette keep ranging? We cannot take our eyes off them.
続きを読むうたかたの酔い、澄みゆく空気の推移から氷塊のクラッシュまで、組んず解れつ切り替わるシーンの連結。個々の演奏家のエッジィな部分が共振しては勃興する音の気配、香気。彼らの音楽は全員の総和でなく相乗で成り立っている。/From the intoxication of effervescent bubbles, the quiet shift of crisp air, to the crash of a heavy block of ice, we experience the dramatic interconnection of changing scenes locked in a fierce and powerful struggle. Each musician’s edgy parts resonate and rise to power, hinting at the signs and fragrances within the sound. Their music is a synergy, rather than the simple sum total of all members.
続きを読む圧倒的な演奏力と物語構成力で、期待を裏切らない進化をみせるクアルテット。無音の部分にこそひた寄せる鬼気がある。人間の業や人生の割り切れなさが照射され、鮮烈なイメージ喚起力とともに変転していく。
続きを読む土着の音楽の憚らぬ喜怒哀楽と、同時に追求される「表現すること」の究極形—その軌道が高次元で交わるトータル・ミュージックの一つの到達点。刹那の振動をも決して逃さぬレコーディングの技倆はもとより、制作サイドの澄み切った感性も結実している。/ We find the unhindered human emotions of indigenous music and the ultimate form of the necessity “to express” concurrently sought; this work is a height of total music in which these orbits intersect in higher dimension. The recording techniques, which never miss a single nuanced moment, and the perfectly clear sensitivity of the production-side completes the successful fruition of this album.
続きを読む巷の民族音楽ブームを尻目に、エキゾチズムを超えた遥か彼岸から喜多の「これまで」が想起される—-そんな感慨すら滲んだ一夜。独創性の錬磨と熟成、それに勝る衝撃はないことを突きつけた。/ With scarcely a sidelong glance at the ethnic music boom on the street, Kita’s trajectories were recalled as if from a distant shore surpassing exoticism, and in this one evening such deep emotions revealed themselves. Outstanding performance, the fruit of original practice and maturity, was thrust into the heart of an appreciative audience, and the impact could not possibly be bettered.
続きを読む高い演奏力を要するスコアがもたらすストイシズム、それに練達し破ることでのみ拓けてくる突き抜けた自由、静謐なパノラマ。脱領域的な音楽だが、ふとした瞬間にふわりと舞うペーソスは、まさに日本人のDNAが呼応せずにはおれない原風景。超現実的でありながら強烈に懐かしい。/ Scores requiring high-level performance resulting in stoicism; only mastery and breaking through them can lead to absolute freedom; and a tranquil panorama. This is extra-territorial music, but the pathos gently fluttering in unexpected moments is certainly an archetypal image that the DNA of the Japanese cannot help but respond to. It may be hyper-realistic, but it is at the same time intensely nostalgic.
続きを読む積極的にヨーロッパ各地での公演を重ねているだけあり、喜多直毅の演奏には経験値と凄みがある。
続きを読む自然発生的な音で時空を満たしてゆくというインプロの事例には事欠かない昨今、ミクロレヴェルまで徹底して考察され、弾き尽くされ、かつ一音単位でも濃密に息吹く喜多直毅クアルテットの音楽づくりは、正統派のラディカルとして群を抜く。
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