Jazz and Far Beyond
Aaron Parksの斬新なバンド、Little Bigの三作目が発表された。パークスの変拍子を変拍子と感じさせない作品と演奏スタイルや、彼の特殊なヴォイシングは相変わらずエキサイティングだ。彼の練習法や作曲過程などを交えて彼の特殊な世界の解説を試みた。
NYCのファースト・コール・トロンボーン奏者であるライアン・ケバリーのグループ、カタルシスの新譜が発表された。あちらこちらにお楽しみ満載のこのアルバム、どの曲を取り上げるか悩んだほどだ。言葉で説明しきれないこのアルバムの面白さの解説を試みた。
セルジオ・メンデスがコロナの後遺症から他界してしまった。彼がブラジル音楽の存在を世界に知らしめたと言っても過言ではないと思う。だが、彼は最も誤解され、正しく評価されなかったアーティストであった。少しでも彼の評価の助けにならないか、と解説を試みた。
ジェイミー・バウムの新譜、『What Times Are These』が4月に発表された。彼女初の詩のコレクションをテーマにした作品だ。歌詞に対する複雑なメロディと巧みなアンサンブル、それを実現する演奏者たちの解説を試みた。
同業者の記事を書くというのはなかなか容易ではないのだが、このアルバムはどの曲も素晴らしい。フィリップ・ストレンジの演奏も最高だ。麻生代さんとのZoomフルート談義やフィリップとのZoomジャズ談義などを交えてこのアルバムのタイトル曲の解説を試みた。
ジェレミー・ペルトの新譜『Tomorrow’s Another Day』はペルトの音楽が大きく飛躍したとこを提示している。シュトックハウゼンのスプライス・ミュージックをグルーヴ音楽にに発展させたディントニ・パークスを3曲でフィーチャーし、それに合わせてアルバム全体が驚くほどエキサイティングなものに仕上がっている。ペルトとパークス両者の作曲技法の解説を試みた。
あのサンボーンが他界してしまった。一つの時代が幕を閉じた。どんなジャンルの音楽にも対応できるファースト・コールだった彼は、実は真のブルース・アーティストだった。数多くない彼のオリジナル曲からお気に入りの1曲を選んで、彼がいかに他のアーティストたちと違う次元にいたのかの説明を試みた。
ブラジリアン・ジャズの新生として以前からアマーロ・フレイタスの名前は聞いていたが、今回初めて彼の音楽に触れてみた。予想に反しブラジリアン・ジャズというよりはミニマル音楽とプログレッシブ・ロックとジャズ・ピアノ・トリオの融合をブラジル特有のタイム感で演奏している音楽だった。ヘミオラの嵐だが決して難しい音楽のサウンドではなく、限りなく美しいその様を解説してみた。
この4月12日にケニー・ギャレットの新譜がリリースされる。先行公開された1曲を聴いてすっかり虜になった。運よくアルバムのプロモーション音源を手に入れることが出来た。本人はアルバム全体で1曲と言ってる、そのアルバムはまさにマイルス愛に溢れている。コラボレーション相手のスヴォイがこれまたすごい。書いていて興奮してしまった。
おかげさまでこの楽曲解説も第100回を迎えることができた。記念にどうしても書きたかったテイラー・スウィフトを取り上げてみた。なぜ彼女がこんなにすごいのか、どう彼女の音楽が素晴らしいのか、を限られた時間内でできるだけ掘り下げてみた。彼女の作曲能力は半端ない。
前回楽曲解説#98でご紹介したチャーリー・バレンタインの伴侶であるアマンダ・ガーディエィの新譜が発表された。ドラムに「The Bad Plus」のディヴ・キングを迎えてご機嫌なアルバムだと聴いていたら、アマンダのとんでもない作曲のアイデアの数々に気がついた。Zoomインタビューを交えて彼女の素晴らしさの解説を試みてみた。
今回は、偶然YouTubeで見つけたCharlie Ballantine(チャーリー・バレンタイン)という若手ギタリストを取り上げてみた。恐らく日本では全く知られていないと思う。インプロビゼーションでのフレージング、ギターのサウンド、エフェクターの使い方、曲のアイデアなど全てが新鮮な彼の音楽は不思議な魅力で聴くものを惹きつける。ほとんどネットに資料が存在しない彼を掘り下げてみた。
今日本をツアー中のHiromiの新しいバンド、「Hiromi‘s Sonicwonder」の新譜が届いた。このバンドはすごい。特にフランス人ベーシストのHadrien Féraud (アドリアン・フェホー) に思いっきり顎落ち状態になってしまった。収録曲も全て素晴らしい。彼女のユーモアのセンスも充分楽しませてくれた。今回彼女の曲を分析してみて、今まで気が付かなかった彼女の細かい作曲技法を知った。
偉大な作編曲家であり、運動家であり、ちょっと怖いけどユーモアたっぷりのCarla Bley (カーラ・ブレイ) が他界してしまった。George Russell (ジョージ・ラッセル) 繋がりで親近感があったのにあまり知らなかったカーラだが、面白いインタビューを見つけたのでそれを含めてユーモアたっぷりのこの1曲を解説してみると、カーラの凄さを改めて思い知った。
9月15日に発表になったジョシュア・レッドマンの新譜、『where are we』がちょっとすごい。彼の初の試みである歌手の起用とコンセプト・アルバムとしての内容がなかなか面白い。だがなんと言っても1曲目で完璧にやられてしまった。今まであまり聴いていなかったジョシュアの解説を試みた。
念願のCory Henryのライブを観た。Snarky Puppyの<Lingus>の映像を見て以来ずっと彼のライブを観たかった。ハモンドB3奏者として、またシンセサイザー使いとして追従を許さない彼のソロ・ピアノは、予想を遥かに超えて素晴らしいものだった。4歳からプロ活動をしている神童の凄さの解説を試みてみた。
お気に入りのChris Potter(クリス・ポッター)の、待望のVillage Vanguard(ヴィレッジ・ヴァンガード)のライブ録音三作目が出た。選曲といい、それぞれの曲の料理方法といい、バンドの完成度といい、全てが素晴らしい出来なのだが、なんと言ってもポッターの演奏の進化ぶりに驚いた。実直な会社員風の、アーティスト然としていない彼のインタビューをネットから拾って、彼の音楽の解説を試みた。
Donny McCaslinのすごい新譜が出た。常に限界に挑戦するようなサウンドだった彼の音楽がパンデミック中に進化を遂げた。このアルバムは彼の向かっている方向がはっきりと提示されている。Zoomインタビューで明らかになった意外なこのアルバムの真意を紹介しながらそれぞれの曲の解説を試みた。
小曽根さんを取り上げるのは今回で3度目になる。第一回は小曽根さんの指先から虹のように溢れ出るアイデアを、第二回はモーツァルト言語まで習得している彼の凄さを取り上げた。今回は日本ツアーを先日行ったこのスーパー・カルテットの10年前のライブ録音のリリースを機に、彼の作曲作品に焦点を当ててみた。ご機嫌なグルーヴと、小曽根さんがソロピアノで見せる自由な発想を可能にするこのコンボの解説も試みた。
マイルスの甥っ子で、80年代前半のマイルス・バンドに参加していたVince Wilburn Jr.と、19歳の時に『Bitches Brew』に参加したLenny Whiteというドラマー二人によってプロデュースされたこのマイルス絡みのアルバムはともかくすごい。マイルス愛を満載しマイルスのスピリッツを継承しながら新しいサウンドを追求している。レニー・ホワイトの素晴らしい作曲と鍵盤演奏に感銘。ヴィンスに聞いた色々な話を交えて分析を試みた。
とうとう亡くなってしまったウェイン・ショーター。彼の凄さは語り尽くせない。今回は彼の哲学や思考回路を掘り下げ、ショーターの作品の中で最高傑作の一つである<Nefertiti>の素晴らしさと、この曲に含まれる数多くの謎の解説を試みた。
バカラックが亡くなった。わざわざ聴いた覚えはない彼の曲のメロディーが頭の中を流れ、その作曲者は彼だと知っている自分に驚く。それほど生活に染み渡ったバカラック作品は演奏者泣かせでもある。結果はミリオンセラーだったがバカラックが気に入らなかったこの曲のオリジナル録音と、彼が賞賛したアレサ・フランクリンのカバーバージョンとの比較を試みた。
10代の若者が感染するような病気であのジェフ・ベックが突然死んでしまった。全てのギタリストのヒーローだった彼は、エレクトリック・ギターの限界に常に挑戦していた。親に反対されたエレクトリック・ギターとホットロッドと、叔父さんに禁止されたブルースに一生を捧げた彼だった。ジャズを理解していた彼の凄さの解説を試みた。
1997年に筆者のスパー・ヒーローだったトニー・ウィリアムスが医療ミスで急死してから、マイルス以外のトニーを暫く聴いていなかった。この12月12日のトニーの誕生日に久しぶりにトニーに目を向け、神童ぶりを発揮する幼少期の紹介と併せて大好きなトニーのオリジナル曲、<Pee Wee>を掘り下げてみた。
体調が心配されるジョニ・ミッチェルがこの夏突然ニューポート・フォーク・フェスティバルにゲスト出演し、多くのファンを安堵させてくれた。ジャズファンにとっても重要な、天才ジョニの凄さの解説を大好きな<Moon at the Window>で試みた。
ファラオ・サンダースが他界した。コルトレーンの後継者だとか、フリー・ジャズの旗手だとか言われているが、筆者にとっては常に新しいサウンドを追求していた生粋のジャズアーティストだった。絶叫サウンドで有名だが、実は美しい音色を追求していたに違いない彼の真の姿を追ってみた。
今回は筆者ツアー中で通常の楽曲解説が書けないので、番外編として頭に浮かんだことを徒然と書いてみた。この9月16日に発表されたマイルスの『That’s What Happened 1982-1985 (The Bootleg Series, Vol. 7)』に含まれる、1983年7月7日のMontreal(モントリオール)Jazz Festivalでのマイルスの演奏に触発されて色々と思考を巡らせてみた。
ウォーレン・バーンハートが83歳で亡くなった。ブレッカー・ブラザーズが経営していた、スタジオ・ミュージシャンたちの息抜きの場であったジャズクラブ、Seventh Avenue Southで活躍するアーティストの一人だった。彼の演奏や作曲作品が大好きだったので、なぜもっと評価されないのかその謎を探ると、驚くべき経歴が浮かび上がった。
Cécile McLorin Salvant(シシール・マクロリン・サルヴァント)はまさに新世代のアーティストだ。これまで出したアルバム全てでグラミーを受賞している。3月に発表になった『Ghost Song』ですっかり虜になってしまった。このアルバムを通して彼女の魅力と育った特殊な環境、そして才能とは何なのかを探ってみた。
大好きなTheo Crokerの新譜が発表された。前作に続く3部作の2作目だ。今回も最高の出来だが、前作とかなり違う。謎のアルバムタイトルの意味や、「ジャズは死んだ」と繰り返すそれぞれの曲の解説を、本人のコメントを交えて解説。
この3月17日に発表されたブラッド・メルドーのこの新譜には度肝を抜かれた。今まで知らなかったメルドーのグルーヴ感や、彼の音源オタク性を堪能させてもらった。プログレッシブ・ロックの名曲の数々を使って旧約聖書を紐解くメルドーの、この素晴らしいアルバムを分析してみた。
この4月22日はミンガスの生誕100年記念だった。ミンガスは現代のアメリカ代表作曲家として名を残したが、ビバップ以降のジャズ演奏の位置付けをしたという功績を忘れてはならない。ミンガスの偉大さを言葉で表現するのは至難だが、彼の演奏スタイルの解説と、難曲<Pithecanthropus Erectus>の解説に挑戦してみた。
耳に親しんだ音楽が実はクインシー・ジョーンズの作品だったということが多々ある。プロデュースの他にも映画やTV音楽での活躍が多岐に渡るからだ。そんな1曲を取り上げてみた。また、クインシーがプロデュースした歴史に残る大イベント、<We Are The World>にも触れてみた。
待望のロバート・グラスパーのBlack Radioの3作目がリリースされた。これは単なる娯楽作品ではない。政治的な話題を公の場で意見することを好まないが、このアルバムの背景として、危険を承知でアメリカの人種問題に少しだけ触れてみた。楽曲解説としては、グラスパー・マジックである彼のボイシングやテーマの構成を解説。
前回のケニー・ギャレットのアウトの解説に寄せられた読者の質問で引き合いに出したスティーブ・コールマンを取り上げてみた。筆者はコールマンの初期のファンクバンドをしこたま聴いたものだった。「踊れる変拍子ファンク」の反面哲学的に発展するコールマンの音楽と、グルーヴしまくる彼の素晴らしい演奏スタイルを解説。
大好きな画家、Rudy Gutierrezのジャケット画に魅せられて手に入れたケニー・ギャレットの新譜、最初の1曲目から新しいアイデアに吸い寄せられた。アート・ブレイキーに捧げられた曲、<For Art’s Sake>に表れるギャレットのアウトの美学の解明を試みてみた。
作編曲家として数々の功績を残し、かたや超絶技巧のトロンボーン演奏で知られたスライド・ハンプトンが89歳で亡くなった。保守的なサウンドで成功を収める反面大冒険をするという二面性を持ったこのアーティストの、クリエイティブな面を解説。
ピアノ・トリオの魔術師、ジョージ・ムラーツが亡くなってしまった。実に色々なグループで楽しませてくれたベーシストだ。追従を許さなかった彼の特殊なスタイルや、ジャズに於けるベーシストの役割を超越していた彼の音楽を、リッチー・バイラークとのインタープレイを引き合いに出して解説。
大好きなTheo Crokerの新譜が発表された。期待通りのご機嫌なグルーヴと惚れ惚れする彼の音色に加え、新しいアイデア満載だ。また彼のアイデアを実行できるバンドメンバーにも感嘆。通常の楽曲解説とは趣向を変え、インタビューも交えて全曲解説を試みた。
1991年9月28日に他界したマイルスの最後のヨーロッパツアーの2日目である7月1日、仏ヴェイエンヌ(Vienne)・ジャズ・フェスティバルでのライブ録音がこの6月25日にリリースされた。目玉はなんと言っても初公開になった2曲のプリンス作品だろう。マイルスとプリンスのコラボに関連付け、2曲中1曲を解説。おまけはケニー・ギャレットのユニークなアウトの仕方を解説。
先日幸運にも小曽根さんとフリー・インプロビゼーションを演奏させて頂く機会があった。こういうフリーインプロを演奏する時は、タイム感も含めそれぞれが培って来たボキャブラリーが全てで、小曽根さんの器の大きさに感嘆した。新譜『OZONE 60』2枚組の1枚目は古いクラシックの作曲家による作品を題材に小曽根さんが即興演奏を繰り広げる。スタイルとボキャブラリーをしっかりと習得しての即興という新しいアートフォームと、題材の一つであるモーツァルト K. 574の解説を試みた。
今回は通常の楽曲解説をお休みして、限られた時間でつらつらとジョージ・ラッセルから得たものや、音楽と文化背景のことや、音楽を媒体とする人と人のコミュニケーションなどについて書き流してみた。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズで親しんだカーティス・フラーが86歳で他界し、ひとつの時代が幕を閉じた感だ。温和な性格と反対にすごいテクニックで攻撃的な演奏を世に残したカーティスは、キャッチーでグルーヴする名曲も数多く残した。その中から、ジャズに非常に不適格な童謡をアレンジした彼の手法を解説。そのアレンジ上でのウェイン・ショーターのソロの解説も試みた。
チャールズ・ロイドの新作、『Tone Poem』を手に入れて真っ先に気になったのがレナード・コーエンの<Anthem>だった。この歴史的な問題作を今演奏するそのロイドの意図を解説。また、80を過ぎて超越したかのように変化したロイドの演奏スタイルの解説を試みた。
ロバート・グラスパー(Robert Glasper)率いるR+R=Now(Reflect+Respond=Now)の2018年にBlue Note NYCでのライブ版がこの2月12日にリリースされた。先行して1月22日に<How Much A Dollar Cost>がストリーミングサービスからリリースされた。筆者はこれを聴いて胸を掴まれた気分になった。原曲は2015年にリリースされた、ラッパーのKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)の問題作で、オバマ元大統領のお気に入りの曲としても知られている。今回はいつもと趣向を変えてこの曲を掘り下げてみることにした。
あのチック・コリアが逝ってしまった。みんな驚いた。誰もチックが死ぬなんて思ってもみなかったと思う。だってつい最近まで自宅から元気そうにライブ発信していたじゃないか。改めて自分に対するチックの音楽の影響力を見直してみた。ジャズを勉強始めた頃に何度も何度も聴いた<Hairy Canary>という曲を取り上げてみた。
去る2020年12月17日に他界したスタンリー・カウエル、Strata-East レーベルの創始者として歴史に名を残し、また数多くの作品を残したが、ネットに流れたほとんどの追悼記事はカウエルを過小評価されていたアーティストとした。カウエルの演奏を分析しているうちに彼の演奏の特殊性に気が付き、解説を試みた。また、彼が使用していたKymaシステムも解説。
前回のWesに続き、今回も筆者のジャズ初心者の頃に戻ってみた。まだマイルスを知らない頃の話だ。『Three Quartets』でチック・コリアに魅了され、次に何度も何度も聴いた<Matrix>の分析と、当時マイルスのバンドのフリージャズのスタイルに多大な貢献を残したチックの解説を試みてみた。
筆者のアイドル、ウェス・モンゴメリーの解説を試みた。たった1年で習得したギターをもって、意図せず生まれたグルーヴ満載の特殊奏法と、卓越したライン構成から歴史に大きな刻印を残したウェス。モーツァルト同様シンプルに聞こえるのに技術的な難易度が高い部分とグルーヴ重視のボイシングを解説。
近藤等則は日本人にしかできないビート音楽を目指していたのだと思う。筆者にとってはマイルスの影響が強く聞こえ、かつマイルスがやらなかったディスコビートに賭けた近藤を分析してみた。彼の驚くほど豊富な斬新なアイデアや、洒落たコミカルな部分や、歌のうまさや、コロナ渦に入ってさらに自宅から5枚のアルバムを出すその精力。偉大なアーティストを亡くした。
マイルスのひと言で開眼し、独自の音楽宇宙を創造したゲイリー・ピーコックの功績は大きい。だがそれは彼が持って生まれた才能に依存する部分が大きい。筆者がお気に入りの、ゲイリーのアルバム『Guamba』を取り上げてみた。ゲイリーが描く宇宙をしっかりと理解して、共同体として存在するメンバーの一人一人の素晴らしさや、高度な技法で書かれたゲイリーのオリジナル、<Celina>を解説。
チャーリー・パーカーが天才だとか、ビ・バップの生みの親だとか、もちろんその通りだ。しかし、バードがはじめた、現在我々がジャズと呼ぶ音楽の独特のタイム感に触れた書物は少ないのではないだろうか。ビ・バップ以前の音楽と以降の音楽の違いを取り上げてみた。またバードのすごさを演奏者の立場から解説。
現代においてロバート・グラスパーやジェイコブ・コリアーと並び筆者をワクワク興奮させてくれるスナーキー・パピー。この3月にリリースされたライブアルバムからの1曲を解説。ジャズの伝統を継承し突発要因を大切にする反面、恐ろしくタイトな演奏を披露するその謎の解明と、ブラジルのリズムをいかにファンクとして消化しているか、また、リーダーのマイケル・リーグの分析も試みた。
滅多なことでは「天才」という言葉を使いたくない筆者だが、ジェイコブ・コリアーに対しては他に言いようがない。独学で基本をしっかりと習得し、限りない可能性へと創造力を推し進める彼は、若干25歳にしてすでに4つのグラミー賞を獲得しているだけでなく、マスタークラスで教えることが出来るほどアイデアを明確に持つ。テクニックや理論も全て消化しており、さらに幅広い音楽のスタイルとグルーヴを完璧に習得し、その上で自由自在にグルーヴしまくる彼の分析を試みてみた。
53日間に渡って毎晩21時に自宅から良質の音と画像でストリーミング配信し、医療関係やライフライン関係の方々にエールを送り続けた小曽根真、演奏された曲数は400以上だった。スタンダード曲に冒険を惜しまない彼の演奏は、9千人にのぼる視聴者を毎日ワクワクさせた。神野三鈴夫人の尽力で共同体感覚が生まれ、今までにないストリーミング配信形態が誕生したと言って過言でないだろう。その中で一番印象に残った<Someday My Prince Will Come>を題材に小曽根マジックの解説を試みた。
2年前に90歳でまだ元気にヨーロッパツアーをしていたリー・コニッツがCovid-19に倒れた。歴史にしっかりと足跡を刻み込んだコニッツ、その人気の謎を探る。楽曲解説部分ではブラッド・メルドーと触発しあってエキサイティングなインプロラインを生むその様子を掘り下げてみた。
偉大なマッコイ・タイナーが死んでしまった。コルトレーンの陰に隠れて過小評価されていた感が否めない。マッコイの名作のひとつ、美しいメロディと奇抜なコード進行と斬新な構成でスタンダード化した<Search For Peace>を取り上げてみた。そのほかにもマッコイのシグネチャーであるペンタトニック・ボイシングも解説。数多く残されたマッコイの名言もかき集めて紹介。
偉大な音楽の建築家、ライル・メイズが死んでしまった。引退して10年も経つのに、その惜しまれ方に胸が熱くなった。ライルの偉大さを語るのは容易でない。あまりにも特殊すぎるのだ。まずライル自身の人物像と、そしてライルのパット・メセニー・グループでの貢献とソロアルバムと比較し、ライルの音楽を探求してみた。
この1月18日に惜しまれて他界した、ロータリー・トランペットでバリバリのビバップを超絶技巧で楽しませてくれるClaudio Roditi(クラウジオ・ホジーチ)は、ブラジル音楽とビバップを融合させた功績者で、アメリカでは幅広く愛され尊敬されていた。いい機会なので今回は2つの文化を融合させることの難しさと、それを難なくこなしてしまうMcCoy Tyner(マッコイ・タイナー)のすごさ、そしてマッコイに影響されてビバップからアウトしたクラウジオを分析してみた。
NYで活躍するカナダ人、クリス・デイビスの『Diatom Ribbons』がこの9月に発表された。アバンギャルドとかフリーとかにカテゴリー分けされているが、彼女の作曲能力は恐ろしいほど高度だ。タイトル曲<Diatom Ribbons>、その絶妙な構成と、これだけ複雑に仕込まれた曲なのに全く奇をてらったように聴こえない部分と、使用されているセシル・テイラーの語りのサンプルを解説してみた。
11月21日のコールマン・ホーキンスの誕生日に久しぶりに<Body and Soul>を聴いたら、急にコルトレーンバージョンを分析してみたくなった。何せ書きたいことが山ほどあるコルトレーンバージョンなのだ。イントロから始まるラインクリシェ、度々登場するオーギュメンティッド・トライアッドの意味、コルトレーンの3トニックシステムなどに焦点を当て、鉄腕アトムも交えていつもより少し専門的な解説を試みた。
訳あってしばらく遠ざかっていたが、「Trilogy」トリオでまた聴きだしたチック・コリアだ。ボストン公演のライブ報告も含め、最新作『Trilogy 2』からマイルスの名曲、<All Blues>を取り上げてみた。多くに誤解されて演奏されているこの曲、チックの奇抜な解釈と、チック節のおしゃれなインプロラインを解説。
待望のマイルスの『Rubberband』のフルアルバムがついにリリースされた。ボツになったアルバムという危惧をよそに、モダンなミックスとプロダクションで、発掘版ではなく新しいリリースとして充分耐え得る作品だ。このアルバムで重要な役割を果たしたAdam Holzman(アダム・ホルツマン)とのインタビューを中心に、彼も作曲者とクレジットされている<See I See>を解説。
昨年の『Both Directions at Once: The Lost Album』に続き『Blue World』というコルトレーンの未発表アルバムがこの9月27日にリリースされることになった。これは発掘盤ではなく、映画のサウンドトラックのためのセッションがアルバム化されたものだ。コルトレーンとしては前例のない、昔のレパートリーを再びスタジオ録音するという意味で、彼と彼のカルテットの進化の証明が提示された。今回はマッコイの驚異的なコンピング(伴奏)にも焦点を当ててみた。
ボサノバの生みの親と言われるジョアン・ジルベルトが他界した。一つの時代の終幕である。自作曲を多く残したわけでもないジョアンがどうしてこうまで歴史に名を残したのか、その謎の解明に挑戦。同時に歴史上最初のボサノバ曲と言われる、アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲<Chega de saudade>を楽曲解説。
この4月13日にビル・エヴァンスの未発表ライブ2枚組、『Evans In England』がリリースされた。7年近く続いたビル・エヴァンス第二期トリオだ。このアルバムをもって、ジャズの歴史の中でどうエヴァンスが特異であったかを考察して見た。また、スイングの曲でのエヴァンスの意外なボイシングも採譜で解説。
グラスパーほどのちからはまだないにせよ、確実に新しいジャズを創造していくシオ・クローカーの待望の新譜が発表された。期待通りの傑作で書くべきことは山ほどあるが、今回は趣向を変え、作家村上春樹氏を引き合いに出させて頂いて、ジャズの流れにも触れてみた。ついでにアーウィン・ホールの爆発的アルトソロも採譜して解説。
実直な会社員のような風貌で、笑顔を絶やさず優しく喋るが、超人的なテクニックをもって余裕の演奏で自由自在にグルーヴしまくるクリス・ポッターの新作は、ECM以前のUndergroundの時代に戻って、ベースレスでガンガングルーヴしまくる。Underground時代より進化した、デイブ・ホランドに鍛えられた変拍子でのグルーヴとポッターやこの新トリオのキーボーディスト、若干23歳のジェームス・フランシーズの新鮮なインプロ方法を解説。
1,500回近く録音されて、最も多く録音されているというこの曲、タイトルもコード進行も、メロディでさえモンクのオリジナルと異なるバージョンが普及している謎を取り上げて見た。そして筆者がタブーとしているマイルスのインプロの崇高なラインの解説も試みる。
ウェイン・ショーターの『Emanon』がグラミーを受賞した。2000年に結成した「Footprints Quartet」での4度目の受賞になる。「ユニークで実現困難なアイデアを実現させることにチャレンジする」ことを目指していると受賞式で語ったショーターの、言葉で言い表せない凄さを解説することを試みてみた。彼の天才的な作曲力はもちろん、彼の追従を許さないタイム感に焦点を置いてみた。
お気に入りのシオ・クローカー(Theo Croker)が新作『Star People Nation』の制作に掛けて去年からツアーを続けており、いつリリースされるのであろうかと期待感が高まる中、とうとうシングル<Subconscious Flirtations and Titillations>が今月(2019年1月18日)に発表された。彼の曲作りの哲学的な部分や、巧妙に仕組まれたモチーフの発展や、演奏のというより作品という構築に焦点を当て、また彼のロマンティストである側面も解説。
マイルスの未公開アルバムのタイトル曲が本年公開された。マイルスが30年に渡るコロンビアとの契約を切ってワーナー・ブラザーズに移籍した1985年の第一弾になるはずだったこのアルバム、名プロデューサー、トミー・リピューマはこれをボツにして『Tutu』を製作し、マイルスが再度歴史を変える手伝いをした、その理由を考察。
若くしてあっけなく他界してしまった天才トランペッター、ロイ・ハーグローヴ。彼はハード・バッパー、R&Bアーティスト、ブラックコンテンポラリー音楽家と3つの顔を持っていた。そのブラックコンテンポラリーで彼が3年ほど活動した、筆者のお気に入り「The RH Factor」のデビューアルバム、『Hard Groove』からオープニングの<Hardgroove>を取り上げ、ランディ・ブレッカーの影響力などにも触れてみた。
先日惜しまれて他界したソニー・フォーチュン。雇われたバンドの要求に応じて演奏スタイルを変えることができる職人肌の奏者だった。ミュージシャン仲間や業界関係者から信望厚くその人間性が窺える彼の、マイルス・バンドに於ける彼の持ち曲だった<Maiysha>を解説。リーブマンもを唸らせたフォーチュンのフルート演奏を解説。合わせてマイルスのこの問題作、『アガルタ』の解説もお楽しみ頂きたい。
筆者にあまり馴染みのなかったランディ・ウェストンが他界した。てっきりアフリカ音楽の一人者かと思っていたが、色々聴いてみると予想を反してかなりトラディショナルなジャズ・ラテンのサウンドだ。まずは彼の考えるジャズとアフリカ音楽に触れ、ジャズ・ピアニストとして彼の素晴らしさが光る1曲を取り上げて解説してみた。
The Queen Of Soul、アレサ・フランクリンが他界してしまった。アレサのもっともヒットした曲、<Respect>と、同年に同じようにヒットした<ナチュラル・ウーマン>は、アメリカの公民権問題に多大な影響を及ぼした。今回は趣向を変え歴史を紐解いてみた。また、この曲<Respect>の構成の面白さも解説。
Untamedと言うのは、野生の、という意味になる。やはりサファリなどアフリカをイメージした曲なのかも知れないが、『Afrodeezia』に収録されているようなルーツ色は薄く、自然にバックビートでグルーヴする曲、なのだが、初めて聞いた時一体この曲はどうなっているのかわからなかたのだ。そんな曲はこのアルバムを通してこの一曲だけであり、即座に楽曲解説の題材にしたいと思った。
恐らくコルトレーン本人はお蔵入りさせるつもりだったのではないかと思われるレコーディングが発掘された。筆者にとってコルトレーンとは何だったのか、ということに触れながら、先行公開された第一トラックを解説。ビ・バップのフレーズを否定し、4度飛びとペンタトニックなどのフレーズを開発したコルトレーンに焦点を当ててみた。
来たる6月15日に発売されるロバート・グラスパーのスーパーバンド、R+R=NOWのデビューアルバムから、シングル先行リリースされた1曲を解説。テレース・マーティンやデリック・ホッジなどの個性の強いアーティストたちとの巧みな共同作業や、グラスパーがいかにマイルスなのかに焦点。
他界してしまったセシル・テイラー。彼がライフ・ワークとしたフリーインプロビゼーションではなく、彼のデビューアルバムからオリジナルのブルース曲を取り上げた。分析して初めてセシルのヴォイシングがコード進行に忠実だったことを発見、また、セシルが曲のフォームをいかに尊重していたかなどに焦点をあててみた。
最初筆者があまり得意でなかったキースのこのトリオ、彼は1988年に病に倒れ、2年間の療養の後グルーヴ感をすっかり変えた。それを記録する貴重なアルバムがこの『After The Fall』。この「スタンダーズ・トリオ」のタイム感のすごさを解説。加えて、名曲<Old Folks>での、キースには珍しい彼のインプロの垂直アプローチを掘り下げてみた。
15年近くも新作発表がなかったエルメート、昨年2017年に急に2作発表。その2作目『Natureza Universal』はビッグバンドもの。鬼才エルメートの凄さ満載。その一曲<Pirâmide>はエルメートのちからのショーケースとなっているばかりでなく、参加ミュージシャンの脅威的に高い水準も容易に理解できる作品。このアルバムに深く感銘をうけた筆者が楽曲解説。
ニューヨーク・アートクァルテットなどでの演奏でフリージャズにおけるトロンボーンの位置付けをしたラズウェル・ラッド。恐ろしいほどの数のアルバムを残して他界した、そのほとんどのプロジェクトは多岐にわたるジャンルやスタイルとのコラボ。彼のトロンボーンのスタイルは2種類に別れていたようだ。その2種類が上手に合わさった珍しい録音から1曲解説してみた。
このアルバム『Escape Velocity』は2016年リリースなので、My Pick 2017に含めることはできないが、筆者にとってロバート・グラスパーの『Everything’s Beautiful』と共に最近深く印象に残ったアルバムだ。その中から解説の楽しみ満載の<Transcend>を選んでみた。クローカーの斬新な作曲法とプロダクション能力を解説。
ジョン・ヘンドリクスが他界した。ジャズ界ばかりでなく、ストーンズやビートルズやブラジル音楽家たちにまで影響を及ぼした偉人。ヴォーカリーズをイノベートしたヘンドリクスは、ラップ・ミュージックをこの1958年録音のジョージ・ラッセル作品、『New York, N.Y.』でイノベートしたとも言われている。このレコーディングにまつわるラッセルとヘンドリクスとのやりとりや、歴史に残るコルトレーンの姿などを交えて解説。
今月8日に他界したグラディ・テイト、歌手としてグラミーにノミネートされるほどの成功を納めたが、ドラマーとして歴史に重要な痕跡を残したテイト。地味なようだが恐ろしくたくさんのセッションで名作に貢献している。彼の才能を正当に評価する他のミュージシャンたちに請われて多忙だった彼の特異なキャリア。なぜクインシー・ジョーンズやクリード・テイラーがそれほど彼を必要としたか。テイトの唯一無二のドラミング・スタイルを解説。
面白いのは、マイルスやコルトレーンやエヴァンスやオーネットはラッセルのこの理論に深く耳を傾けたことだった。それがモードジャズの誕生だ。
筆者が苦手なアバクロ、筆者がなぜアバクロが苦手なのかの解説に挑戦。一方アバクロのお気に入りアルバム、『Night』からプログレ系名曲<3 East>を題材に、このアバクロ作品の魅力や、ヤン・ハマー、ディジョネット、マイケル・ブレッカー等の共演者の凄さを解説。
1トラック目から聴き始め、ぶっ飛びまくった。カーターとウイリアムスのグルーヴはマイルス時代よりさらに進化しているのに加え、ジェリは抜群のタイムの位置でグルーヴしまくりだ。
このアルバムで提示されているスイングのグルーヴは、聞き慣れたジャズのパターンなのにタイム感が斬新だ。このアルバムではキース・ジャレット・トリオで聴き慣れたディジョネットのスイング感と違うところを解説。また、ジョン・スコフィールドのオリジナル曲、<Tony Then Jack>という、タイトルと内容の関連性の理解に苦しむが色々な意味で斬新なブルースを解説。
5月26日、マイルスの生誕91周年を迎え、筆者のお気に入りの<ナルディス>を取り上げ、マイルスが『Kind Of Blue』でジャズの歴史に残したモード・ジャズの解説を試みた。この曲はマイルスがあまりにも時代を先行し過ぎて、作曲当時ビル・エヴァンス以外マイルスを満足させられず、マイルス自身によって録音されることなくボツになった曲だ。
アバンギャルドという看板を背負わされたことを嫌い、黒人文化と黒人音楽の伝統を守りながら驚くべきクリエイティビティーを世に残したアーサー・ブライスだったが、商業的に成功しなかったことに苦悩し、パーキンソン氏病に倒れた彼の真のジャズ・アーティストとしての姿を分析してみると同時に、ジャズ・ラテンという曖昧なスタイルの解析も試みてみた。
エリック・ドルフィーの<Last Date>でしかミシャ・メンゲルベルクの名を知らなかった筆者、訃報をきっかけにミシャのフリー・インプロバイザーとしての実力やICPなどでの活躍を知るが、フリー・インプロバイザーとジャズとを両立できる数少ないアーティストとして感銘を受け、ジャズ・プレーヤーとしてのミシャを解析して見た。
フュージョン界のゴッドファーザーと言われていたラリー・コリエルが突然死してしまった。筆者の大好きなフィリップ・カテリーンとのデュオアルバムから<The Train and The River>を解説するとともにコリエルの偉業やフュージョンの歴史も解説。
エルメートがマイルスに提供したこの恐ろしく美しい曲。正しいフォームとコード進行があまり知られていないこの曲を解説。
2016年12月26日にAlphonse Mouzon(アルフォンス・ムザーン)が68歳で他界してしまった。70年代にはファンク系で活躍、その他マイルスのDingoに出演し曲を提供したり、確かウェザー・リポートのオリジナルメンバーだった。
グルーヴ系の曲やスキャットなので著名なベイリーにしては、この曲はかなり斬新なクリエイティビティーを秘めている。ベイリーは同収録の<Countdown>で示したようにトラディションを重んじる。彼のインプロのラインを見ると教科書に書いてあるようなフレーズが多い。そんな中この曲は聴いた途端におっ!と思わせるコード進行とメロディーラインなのである。
このアルバム、ドニーは自分の曲作りのスタイルを維持しながらも明らかにボウイの影響を受けて一段階前進しているのがはっきり聞こえてくる。それはボウイの名曲、<A Small Plot Of Land>と<Warszawa>が収録されているからというわけではない。いや、むしろこの2曲のドニーの料理の仕方をまず特筆すべきだろう。是非ボウイのオリジナルと聴き比べて頂きたい。2曲ともボウイとブライアン・イーノの共作だ。つまりボウイがシンセに重点を置いていた作品の中からの選曲だ。ボウイ亡き後ドニーはボウイのオリジナルメロディーをその原曲と違う仮面にすげ替えて新しい音楽を生み出している。<Warszawa>に至っては、まるで<In A Silent Way>のような空気と思えばコルトレーンの背後霊まで付いてくる。
13歳の子供がこれだけの演奏をするからと言う理由で注目されている、という事実からジョーイを正当に評価しない意見もよく聞く。しかし、彼のこのアルバムのトラックを他のピアノトリオのアルバムとシャッフルして、ある意味目隠しテストテスト的に流した時、ジョーイのトラックを『未熟』などのような印象を受けるだろうか。筆者にとって、新しさがないから面白くないという印象はあっても、このアルバムは筆者が楽しめるだけの要素を十分備えている。
トゥーツ・シールマンズが逝ってしまった。ブラジル音楽をこよなく愛したトゥーツの『The Brazilian Project』、その中からジャヴァンの名曲のひとつ、<Obi>を解説。ジャヴァンの卓越した作曲法と、トゥーツのハイレベルなブラジル音楽の理解度に焦点を当ててみた。
このアルバムは筆者にとって宝箱のようであり、どの曲を楽曲解説に選ぶか随分と迷ったが、よく吟味してみるとどの曲も奥が深く、簡単には楽曲解説などできないと考え始めた。そこで選んだのがマイルスの1974年のアルバム、『Get Up With It』の2曲目、<Maiysha>(マイーシャ)のリミックスだ。
ジェレミー・スタイグが亡くなってしまった
今回の楽曲解説はいつもの楽理的な立場と少し目先を変えてみたい。筆者がなぜこのアルバムを好んでいないかというと、それはこのバンドのタイム感に対して居心地が悪くてしようがないからなのである。
70年代初期、ソウルグループ、スタイリスティクスによるヒットソング、<People Make The World Round>は、マイケル・ジャクソンやフレディー・ハーバードなどの手によってもカバーされた名曲。ディー・ディー・ブリッジウォーターは その名曲を自分のデビューアルバムでオリジナルとはかけ離れたモード・ジャズとして披露した。そのアレンジの素晴らしさを解析。
プリンスの看板曲、パープル・レインの解説。映画との関連、この曲が発表されたライブと1年後のリリースなどにも触れ、プリンスの天才的な曲の構成、コードのヴォイシング、コード進行等を解説。
ポール・ブレイと言えば、我が恩師、ジョージ・ラッセルの『Jazz In The Space Age』でジョージが発掘したビル・エバンスとピアノの掛け合いをやっていたのを思うが、筆者にとってはむしろジミー・ジュフリをすぐに思い浮かべる。『The Life of a Trio』である。ジミーはジョージ・ラッセルと親しく、よく食事を共にしたのが懐かしい。ジミーとジョージの関係でポールがニューイングランド音楽学院に就任したのは1993年だったと記憶する。筆者がすでに卒業した後であった。
10月8日にインパートメント社から国内配給が開始された我々ハシャ・フォーラの新譜、『ハシャ・ス・マイルス』の曲目解説を依頼されたのだが、実は困っている。自分の曲の説明を公開したくないのだ。
無理に一般概念にあるようなジャズにはしない、邦山の素晴らしさを充分に引き出せる構成に魅せられた。自分のピアノの誇示をするのではなく、まるでひとつの宇宙を完成させるような、そんなPooさんの演奏にも魅せられた。
筆者は恥ずかしながら「ロバート・グラスパー・エクスペリメント」以外の彼の活動をまったく知らなかった。今回の新譜、『カヴァード』について解題執筆の必要があって初めてブルーノート契約時の2作はトリオだったと学んだ次第。急いで試聴してみると、当時はもっとストレートなジャズ寄りの演奏をしていたのだと知った。10年前の話だ。